株式会社エア・コーポレーション

自邸のリノベを通して改めて考えた「住まいへの愛着」


築25年の自宅をリノベーション

昨年、築25年の3階建ての自宅をリノベーションしました。アメリカから建材や設備機器を輸入したうえ、大工までも呼び寄せて、憧れを全部詰め込んで建てた輸入住宅。斬新なデザインだったが、私もまだ若く、“暮らし”がまったくイメージできずにつくったものだから、実際に住んでみると、正直あまり良い住み心地ではなく…(苦笑)。リノベーションの内容は、実例集の「House.J」をご覧いただくとして、この設計から完成までのプロセスを通して考えたり思ったりしたことを少し話そうと思います。

 

 

 

新築時に欠けていた“憩う”という視点

私はリノベーションの醍醐味は「愛着を大事できること」だと考えています。自邸でもそれは同じ。残せる部分にはなるべく手を加えず、家族の歴史や思い出を引き継ぐことを大事に考えました。

 

追求したのは、新築時に欠けていた“憩う”という視点です。

 

実は今回、私は、25年前の自分がいかに見た目や効率にばかり捉われていたかを改めて痛感することとなりました。思えば最初にそれまでの自分の認識を覆されたのは、京都に歴史のある茶室を見に行ったときのこと。初めは建築手法や装飾にしか目が行かず、「古くて狭いし、居心地が悪そう」と感じました。しかし、ひとたびそこに座ってみると、古色蒼然とした趣や天井の低さが逆に心地よいことを発見したのです。それまでは「新しくて広くて天井の高い空間こそ快適」と思っていた自分には、目から鱗でした。

 

もう一つのきっかけが、東日本大震災です。津波で流された家や倒壊した家を目の当たりにして、家を失うことが、長い時間をかけて紡いできた家族の思い出や歴史の喪失であることを強く感じたのです。

 

 

建物は、時間によって深みを増し、「文化」になるということ。それこそが「建築」であるということ。25年前の自分が追い求めていたのは、時間とともに消費されていく「デザイン」でしかなかったということ。そこに気づいたとき、“憩う”という視点が生まれ、それが自邸リノベーションのテーマともなりました。

 

「憩える空間」にするためには、“自然素材”と“スケール”が大切だということを、長年にわたって建築の設計に携わる中で経験的に学びました。ですからその2つに徹底的にこだわりました。

 

 

今回のリノベーションでは、「デザイン」だった建物を「建築」へと昇華することができたのではないかと自負しています。その意味で、自分自身の成長も感じられ、得難い経験となりました。今後も“素材”と“スケール”、そして“憩う”という視点を大切に、心豊かな暮らしを提案していきたいと考えています。

 

薪ストーブのある暮らしをしてみてつくづく思うのですが、手がかかってこそ得られる幸せもあるんですよね。この家で暮らして初めて、家で憩う実感を噛み締めていますが、唯一の欠点は、お酒が進みすぎることでしょうか(笑)。

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佐久間の自邸「House.J」の実例はこちらをご覧ください
https://airco.jp/wps/works/works-153.html

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