House-J.
佐久間の自宅リノベーションです。建物は築25年の3階建てで、もともとはアメリカから建材や設備機器を輸入し、大工までもアメリカから呼び寄せて、憧れていたことをすべて詰め込んで建てた輸入住宅。デザインは斬新で良かったものの、私もまだ若く、“暮らし”がまったくイメージできずにつくったものだから、実際に住んでみると、正直住み心地はあまり良いとは言えなかった(苦笑)。家族が憩える空間にするためには、“自然素材”と“スケール”が大切だということを、長年にわたって建築の設計に携わる中で経験的に学びました。ですからこの計画では、その2つに徹底的にこだわりました。
リノベーションの内容ではというと、建物の形や間取りはほぼそのままで、夫婦が生活する2階を中心に手を入れました。塗り壁仕上げだった外装は、屋久杉板仕上げにしてイメージを一新。白壁と艶のある床に囲まれたヨーロピアン風のダイニング・キッチンをはじめ、内装は床に屋久島杉の無垢材、壁や天井にはレッドシダーと天然木をふんだんに使い、ナチュラルな雰囲気に変えました。
家での時間をより豊かにしようと増築したアウトドアリビングにも、木をたっぷり使いました。室内とは階段3段分の段差がありますが、これは室内とアウトドアリビングのどちら側から見ても視界を妨げない床高を模索して見い出しました。配管の関係で床を全体的に20cmほど上げたので、その分ダイニングの天井高は低くなりましたが、アウトドアリビングの床を下げて目線を下に誘導することで、圧迫感を抑えています。
家族が集う「TVルーム」でありながら、ベランダへの通路にもなっていて、落ち着いてくつろぐことができなかったリビングにも手を入れました。畳敷きの小上がりを設け、それに合わせて窓のスケールも再検討。掃き出し窓をサイズダウンして腰窓に入れ替え、意匠的に畳と合う障子戸を入れました。さらには念願の薪ストーブも設置して、リラックスできる場所をつくりました。
このリノベーションでは、「デザイン」だった建物を「建築」へと昇華することができたのではないかと自負しています。


サーモンピンク色の塗り壁だったリノベーション前のファサード
側面のサーモンピンク色の外壁は25年前のまま。以前の面影をしっかりと残している
25年の月日を経た玄関ポーチの大谷石やステンドグラス風の玄関ドアはそのまま生かした
【Before】ヨーロピアンテイストだったダイニング・キッチン
ダイニングは屋久島杉とレッドシダーに囲まれた木の香が漂う空間。格子入りの長方形の連窓は大きな引き違い窓に入れ替え、その外にアウトドアリビングを設けた
天窓から光が注ぐキッチン。設備を入れ替え、造作の収納棚をレイアウトして使い勝手や動線を改善
ダイニングとアウトドアリビングとで、視界を邪魔しない床高を模索した。窓からは明るい陽射しもたっぷり
アウトドアリビングの屋根は透明のガラス張りで、夜には星空を眺めながらくつろげる
アウトドアリビングは、外階段からも出入りできる設計。ガラスの天井の勾配や床の木幅まで綿密に検討した
以前は階段を上がるとすぐにダイニングが広がっていたが、造作の収納棚で間仕切って視線を遮り、ダイニングのくつろぎ感を高めた
間接照明のやわらかな光が照らすダイニング。以前より天井が低くなったものの、それがかえって心地よさにつながった
【Before】ベランダへの通路を兼ねてしまい、くつろぎにくくなっていたリビング
リビングは畳敷きの小上がりや障子戸で憩える和の空間に。薪ストーブは最高!
小上がりに高さを合わせた引き込み窓が、茶室のにじり口のよう
水まわりも装い新たに。造作洗面台にはケヤキの一枚板を使った
トイレは位置を変更し、将来に備えてスペースを広めに確保