梅樹の家
「和(ジャパニズム)+モダニズム+ヒュ−マニズムの建築」。これが、私が大事にしている住宅デザインのコンセプトです。「和(ジャパニズム)」とは、日本の風土に合う、自然素材を使用した和みを感じる家をつくること。要素を削ぎ落とすだけではなく、そこに「和」の風情を足したデザインを大事にしています。「モダニズム」とは実用性を重んじ、無駄を省いた機能的な建築であること。装飾を極力抑え、今とこれからの暮らしに寄り添っていくデザインを意識しています。最後に「ヒュ−マニズム」ですが、住宅は人が暮らす場。ヒュ−マンスケ−ルに基づいた暮らしやすい設計が必要です。
3つのコンセプトを柱に、素材や佇まいは自然なありのままの姿を大切にし、文化性を重んじた建築をデザインしていくことが、住まい手の豊かな暮らしを育んでいくと考えています。
建主の親戚が住んでいた跡地につくったのが、この「梅樹の家」です。竹林を背景に雑草が生い茂る状態でしたが、その中に古い梅の木を見つけました。家の設計は、その梅の木をシンボルツリ−として残す方向で進めました。
玄関からは水音が聴こえ、中庭の梅の木を垣間見ることができます。玄関右脇に配した和室の客間は、障子戸を開けると梅の木と枯山水の庭が広がります。和室と対峙するのはゲストリビングです。中庭と一体感を持たせるために床を一段低くして地面に近づけるとともに、テラスと水盤を設けました。玄関で聴こえる水音の正体は、この水盤に落ちる水流です。
私は家を設計する際、光や温熱環境はもちろん、水や風の音の存在を考えます。LDKをはじめ、すべての場所で景観、光、風の抜けなどを検討します。
この家はさまざまな居場所からシンボルツリ−が見えるようにつくりましたが、建主の叔母さんから「父も喜んでいると思います」との言葉をいただきました。子どもたちが大人になったときに、梅の木と家族の記憶を思い出してくれたら…と、密かに願っています。
低く構えた家の門は、ガレージに組み込んで建物と一体感を持たせた
静謐な玄関の窓の外にも、梅の木が見える
梅の木と竹林、水盤とテラスに囲まれるゲストリビング
LDKの全景。南面のハイサイドライトからやわらかな光が降り注ぐ
ゲストリビングから見るテラス。水盤に流れ落ちた水の音が心地よく響く
リビングの窓の外にはファミリーガーデンが広がる
間接照明で優しく照らされた和室。中庭とのつながりが心地いい
シンボルツリーの梅の木を囲むように建物を配置した
構造規模 | 木造・2階建て |
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延床面積 | 286.72㎡(約86坪) |
主な外部仕上げ | 屋根/耐摩ガルバリウム鋼板立ハゼ葺、外壁/窯業系サイディング塗装板横張・レッドシダー羽目板張、建具/玄関ドア:木製ドア、窓:アルミ樹脂複合サッシ |
主な内部仕上げ | 床/フローリング、壁・天井/PB+AEP塗 |
断熱仕様 充填断熱 | 床下/押出法ポリスチレンフォーム(ミラフォーム)50㎜、壁・天井/高性能グラスウール24㎏100㎜ |
暖房方式 | 床暖房・エアコン |
工事期間 | 平成29年12月~平成30年8月(約8ヵ月) |